カテゴリー: YMC-BSM 2018 – J
小僧の聖地
8月1日(水)晴れ、時々小雨
「天気図小僧」という言葉が通じるのかどうかわからない。
深い意味はなく、単に天気図を描くのが好きだった子供、くらいのつもりで使っている。海外に出かけたこともないその小僧にとってラジオから流れてくる気象通報の地点は、どこも一人勝手に有名な場所になっていた。
今では1日に1回しか流れないが、そのラジオ放送に耳を傾けたことがある人ならば、ラワーグという発音に聞き覚えがあるだろう。昔を知っている人にとっては、東経135度、北緯29度の定点観測船と同じくらい特別な場所かもしれない。台湾とルソン島の間にあるバスコからの通報が流れない時だけ呼ばれる町なのである。つまり、天気図用紙には最初から記号を記す白丸がない地点なのである。バスコからの通報が数年に渡って途絶えた時期もあったが、今はバスコからの通報が行われているので、やはりたまにしか呼ばれない地点である。
かつて22時からの放送を毎日聞いて描き続けた天気図小僧にとって、ラワーグは特別な名前だった。そこに立ち、気象台職員の作業を横目に、自らの観測を行うことがあるとは30年以上も昔に想像するわけもない。この滞在中に、ご厚意で1度、準備が整ったラジオゾンデの放球役をさせてもらった。自分で揚げているゾンデとなんら変わらないのに、やはり特別である。気象庁のHPで調べてみると、ちょうどその日はラワーグからの通報になっていた。
西南西の風、風力3、晴れ、07hPa、30℃。
ようやく立ったその場所だったが、他のメンバーよりも数日早く離れる日がやってきた。気象台から歩いて1分もしないラワーグ国際空港から1時間でマニラに戻ってきた。
気象台の皆さん、ご協力ありがとうございます。観測はまだ続きます。これからもよろしくお願い致します。(ky)
ガスが足りない?
7月31日(火)晴れ
今回、観測のターゲットの1つが、強い日射に起因して、毎日夕方から明け方にかけて発達する「日周期降水」の振る舞いを調べることである。こちらにやって来て以降、実際に夕方の雨を経験したのはわずかだが、目的であることに変わりはない。このため、普段ラワーグの気象台では、ラジオゾンデ観測を1日2回実施しているが、7月から8月にかけての集中観測期間中の2ヶ月間は1日4回に強化されている。そして、数日前の報告に書いた通り、我々は現在、異なる機種のラジオゾンデの精度確認のため、複数のゾンデを同時に放球する作業を行っている。つまり、それだけラジオゾンデを行うために、それを飛揚するバルーンに充填するガスも普段より多く必要となる。観測開始前に手配していたが、数日前に発生した豪雨による洪水で手配先がダメージを受け、あと1日分あるかどうかの事態が発生した。比較観測よりも1日4回の観測を優先しよう、そう話した矢先、台長さんから別の会社にコンタクトを取ってとりあえず1日分の2本を確保したとのこと。そしてその30分後にはトライシクル(3輪車)に2本載せて早速やってきた。そんなにすぐに手配できるものなのか?
結局心配したのも束の間、元の計画通りに比較観測も継続した。夜までも。
これまで実施した3機種の比較観測は計13回。予想通りの日射の影響を確認している。ところで、雨は降るのか? (ky)
可搬型レーダー
2018年7月30日(月)晴れ
朝、気象台に着くと、レーダーを載せたトラックが先着していた。PAGASA本部のあるケソン市からやってきた。8月1日からの観測開始を前に、セットアップに2日使う。事前調査で決定した気象台から少し南にある小高い丘の上(かつての大統領の別荘、北のマラカニアン宮殿が湖畔に立つPaoay湖を見渡す)に移動し、事前に引き込んだ電源とつなぎ、少しでも視界の広さを確保するように調整が行われている。夜には設置は完了したとPAGASA本部からやってきた職員から報告を受けた。明日は電波を出して、検定作業が行われる。(ky)
さらに賑やかに
7月28日(土)晴れ、夕方雨
YMC科学運営委員も務めるフィリピン大学のカブレラ先生と7名の学生が気象台にやってきた。実際の観測現場を見学する機会の提供だけではなく、今後、比較観測の結果を使って補正法の開発に何人かの生徒は関わり、修士論文の一部にもしようとしているためである。また、今回、このような意義と方法を学ぶことで、今後フィリピン国内の他のPAGASAステーションのデータに対して、彼ら自身が直接かかわって処理することも期待している。
大学のあるケソン市から7時間のバス移動で到着したばかりで、疲れているはずだが、先生の前だからか、まじめに講義を受け、作業にも手を出した。3台のラジオゾンデを同時に飛揚するための枠を一緒に作ってもらった。ワイワイ仲良くやっている。あと10個は作ってもらうよ、とは伝えてある。 (ky)
無事観測が終わりました!
比較実験開始
2018年7月27日(金)晴れ
昨日のうちに検討をつけた配置案に対して、午前中に地元のDIYショップで必要部材を揃える。気象台に着くと、アンテナを運びだし、受信機をおいた建物まで、買ったばかりのガイドロープに沿ってケーブルを這わせる。GNSSとラジオゾンデ、2つのアンテナ。前者は衛星から受信機までの電波の大気による遅延を利用して可降水量を算出するためである。ラジオゾンデのデータから算出される可降水量との比較検証に使うことができる。外での設置作業が終わると、3台のラジオゾンデを同時飛揚させるための固縛用部材の工作に移る。異なる重さのセンサーのバランスをとり、適当な長さに吊り下げる。初回ということもあり、少し早目に準備を始めた。そして定刻の16時半、2mほどに膨らんだバルーンに取り付けられた三角形は、まだ強い日差しが残る8ktの 風の中を5m/secで上昇を開始した。青い空に白いバルーンが3kmを超えてもはっきりと確認できた。
室内では3台の信号処理器がそれぞれのペースで記録をモニターに映し出す。気象台には台長さんと我々の作業を部材調達から配線、信号処理に至るまでフォローしてくれるベテラン技術者の他に2名のスタッフ。なぜか比較対象のラジオゾンデを納入する代理店のスタッフまでが参加して、小さな部屋は一杯になる。第1回目の比較観測は75分ほどで無事終了した。データを確認し、明日の作業の確認をして、帰る時には時計の針は19時を回っていた。(ky)
ラワーグ
2018年7月26日(木)晴れ、夕方雨
ようやくこの地に立つ。
なぜようやくかは明日以降説明することにして、とにもかくにも、豪雨のマニラを発ち、50分のフライトで(その前に飛行機が飛ぶまでに搭乗してから1時間以上待ったが)ラワーグに着いた。今回の集中観測点の1つ。北進季節内振動や日周期降水、場合によっては熱帯低気圧も視野に、大気の様子をラジオゾンデやドップラーレーダー、地上気象などで計測する。
今回の1週間強の滞在では、主にラジオゾンデの比較実験が主体となる。YMCには多数の現業機関が参加しているが、サイトごとに異なるメーカーのラジオゾンデを採用しているため、機器間の差異を把握する必要がある。フィリピンでは実に1つの機関で、4つの異なる測器を使用している。今回はあいにく4機種すべてではなく、3機種だけだが、同時飛揚を行い、その差を確認する計画だ。現地機関PAGASAも、今後の方針決定のため全面協力してくれている。滞在後半には、トラックに搭載された可搬型Xバンドマルチパラメータ―レーダーが導入され、8月の1ヶ月間観測を行う予定になっている。今後、1週間、これらの様子をここで報告予定。
ラワーグに着いた。(ky)
みんなで飛ばす特殊ゾンデ
2018年7月23日(月)晴れ時々くもり
観測も終盤になってきました。観測で大事なAWS(自動気象測器)の調子がおかしかったり、ガスボンベの調子がおかしかったりと色々なトラブルが起こるので、現地スタッフの方々に助けられながら、特殊ゾンデを放球しています。写真はAWSの修理・点検とサテ・パダンです。 (tk)
初めての生ドリアン
2018年7月20日(金)晴れのち雨
今日は、高知大の村田さんとともに、ドリアンがやってきました。ドリアンは現地スタッフの方にあけてもらい、皆で食べました。
個人的には、おいしかったですが、たくさんは食べられないなと思いました。写真はドリアン、ドリアンを割る様子です。(tk)