新メンバー加入!?

みなさま、こんにちは。
航海も後半戦に入りました。平和に、安全に観測を行っています。
さて、最近新しい仲間?が増えまして、乗船者の関心を引いている子がいます。
いったいどこから来たのでしょうか。ここ数日、甲板をうろうろしている謎のとりです。
じっとどこかを見つめていることが多く、何を考えているのか気になってしまいます。
このごろは、とりの目撃情報を交換することが日課になりつつあります。
そして、こころ優しい方がとり用の水飲み場を作ってくださっていました。
とりよ、元気であれ。
(K.I.)

雨乞いの結果: 中間報告

先日、「雨乞い」という投稿を書いた者として、その後をご報告。

……写真の通りです。
衛星画像から、今日こそは派手な雨降りを期待してたのですが、
何故かここ数日「みらい」から見えるのは、こんな雲ばかり。
これはこれで美しいのですが、派手なのが来ません。
水温を見る限り、ポテンシャルは十分あるのに。

……と、さっきまでは悩ましく思っていたのですが、
今夕に配信された予報を見て、俄然気合が入ってしまいました。
さっきまでとは違う嬉しい悩みを抱え、今晩を過ごすことになりそうです。

結果はまた、ここでご報告しますね。

追伸:
先日、「漂流ブイ」の記事の末尾に思わせぶりに書いた事、
どうやら現実になったかもしれません。
日本の皆様、接近中(既に接近済)の台風、どうかお気をつけて。
(気象学者として、派手な気象現象は好きですが、派手な災害は決して好きではありません)

(M.K.)

雨乞い

本日、早朝に漂流ブイ観測(2回め)を開始。
塩分計測が付いてるのがミソなので、塩分を変えるイベント=降雨 を狙ったのですが、少なくとも(日勤の私はいい加減寝なくてはならない)現在(船内時23時前)まで、まぁ、ものの見事に「みらい」の近傍(と漂流ブイの近傍)は降雨から避けられている様子。

周辺の降水雲が撒き散らした雲のおかげで、こんな美しい夕焼けが見れたりしたのではありますが……

いや、私は夕焼けの観測に来たわけじゃない! と自分を戒め、当方の予測の何がまずかったのか、ただ、運がなかっただけなのか、はたまた、晴れ男かもしれない自分が夜ふかししてるからいけないのか…… 少なくとも要因をつぶしていくべく、本日はもう(23時も近づいてきたので)寝ます。

毎日も4時起き。回収は明日の午後。
この後、状況が劇的に変わってますように。
雨よ、近くに来てくれ。

(M.K.)

Rain-Ball

8月20日8時30分(UTC)のラジオゾンデ観測では、風船は虹のかかっている空に旅立ちました。

「みらい」MR20-E01航海の集中観測を始めてから2週間が経ちました。これまでに「多彩」な観測データを捉えました。

それを祝おうと空が美しく飾られました。

(BG)

漂流ブイ観測

同じような文体で同じような観測の紹介が続いてすみませんが、本日は「漂流ブイ」の回収作業があったので、そのご紹介。

昨日ご紹介した「ウェーブグライダー」の記事で、「周りの海水や大気をあまり乱すことなく、自然に近い状態のデータを取ることができます」と書きました。それを更に求めたのが、この漂流ブイです。ウェーブグライダーと違って話は単純で、数十cmくらいの大きさの浮き(ブイ)にセンサーを付けて流します。潮の流れに身を任せているので、周りの自然な海の状態をほとんど乱さないデータが取れます。で、暫く後に、ブイを回収します。

……とはいえ、実際はそう簡単な作業ではありません。まず、今の我々は「定点観測」中です。が、1日に何十kmも先へ流れるブイを拾い上げるには、定点を一時離れねばなりません。24時間続いている観測やそれに携わる人のスケジュールの変更など、船中挙げての調整が必要となりました。

また、ブイにはGNSS(GPSも含む測位衛星)受信機が付いていて、位置情報を(衛星通信経由で)船上に送って来るのですが、タイムラグもありますし、そもそもGNSS位置情報だけでは数十cmの小さなブイをすくい上げられません。一歩間違って船がブイを「ひいて」壊してしまっては一巻の終わり。なので、GNSS位置情報を頼りに近くまで行き、そろりそろりと近づきながら、大勢の人間が目視で周りを探します。苦闘10分、今回は(も?)研究員よりも先に(この手の周囲監視に手練れた)乗組員さんが第一発見者でした。さすが。そして、仕上げは小型ボートの出動。小さく繊細な(センサーがたくさん付いた)ブイにダメージを与えぬよう、ゆっくりと近づき、最後はボートの乗組員さんの人の手が、ブイを拾い上げました。

という具合に、船中挙げての騒動となった漂流ブイ観測。こんなことまでして測っているのは、海の表面、数cm〜数十cmの深さの水温や塩分の変化です。海面近くでは、大気の影響(日射、風、雨、……)を受けて大きく状態が変化します。そして、大きく変化した海面の状態は、大気の温めかたや湿らせ方に大きく影響します。そして、影響を受けた大気では、雨雲が湧き、風が巡り、高気圧や低気圧が出来……

今日の回収作業は雨雲の合間で行うことになりました。人工衛星で見ると、どうやら今日の雨雲は、差し渡し1000kmにわたる大きな雲群の一部だったようです。そして、船上で今夕に受信した一部の予報には、この雲群の近くで低気圧が出来、強まりながら北に向かう様子が……!

今後数日は、数cmのデータを調べつつ、それが数千km離れた日本にどう繋がるかも、固唾を呑んで見守ることになるかもしれません。

(M.K.)

ウェーブグライダー

昨日ご紹介したように、今回の観測では「みらい」の周囲に無人プラットフォームを複数配置しています。そのもう1種類が、本日ご紹介する「ウェーブグライダー」です。

1枚めの写真が、投入直前のウェーブグライダーです。真ん中の黄色い部分を「フロート部」、下側の、左右にフィンが何本も出ている部分を「グライダー部」といいます。この両者、写真では固定されているように見えますが、一旦海に出るとその固定部の多くは切り離され、長さ数メートルの太いケーブルのみが両者を繋げます。フロート部が海面に浮き、波の力で上下すると、その上下動に応じて海中のグライダー部のフィンが動き、上下動を前進する力に変えて進みます。なので、ちょっとの波さえあれば、動力は不要。進む向きは、衛星経由で指示された目標に向かうように自律的に制御します。省エネの賢い子です。

実際に海上を進み始めたところの写真が2枚めです。フロート部の全長は3mくらい、高さは殆どありません。周りの海水や大気をあまり乱すことなく、自然に近い状態のデータを取ることができます。

このウェーブグライダーには、今回は、海上気象や、海面すぐ近く(水深0.2mと数メートル)の水温・塩分などを測定するセンサーを取り付けてあります。これらのセンサーは、大気と海洋の間の熱・水蒸気・運動エネルギーなどの交換量の計測を意識して選びました。これらに加えて今回は、高精度のGNSS(GPSなどの測位衛星)データを記録し、そこから大気の水蒸気量を測定するチャレンジにも挑んでいます。水蒸気は雨雲の原料であり、その多寡や分布は、雨雲の出来方や、雨雲がもたらす雨や風の分布に影響をもたらします。これらの観測を総合することで、海洋から大気に熱や水蒸気が供給され、大気の水蒸気が増減し、雨雲が出来、雨雲に伴う雨や風が海洋の状態を変え……というサイクルで大気と海洋がお互いに影響しあう「大気海洋相互作用」の観測を目指しています。

今回の観測では、このウェーブグライダーを「3台」同時に展開しています。先にご紹介した「トライトンブイ」及び我々が現在乗っている研究船「みらい」と合わせると、計5点の観測点が、100km四方の空間に配置されています。従来は1点観測や数百km間隔の観測網で調べられてきた大気海洋相互作用を、今回は一桁細かい観測網で測ってみましょう、という目論見です。現在陸上では「密」は避けるべきものとなってしまっていますが、今回は、熱帯海洋上で「密」な観測網を作り出して、新たなデータを得ようとしています。

この3台の賢い子達(と、トライトンブイ)は、観測の最後に「みらい」で日本に連れ帰ることになっています。あと3週間後の再会まで、元気でデータを取り続けられますよう、皆様も応援よろしくお願いしますね。

(M.K.)

トライトンブイ

航海期間も三分の一を過ぎてしまい、本日の写真も1週間ちょっと前の話となってしまいますが、本日はトライトンブイの話を。

今回の観測では、多種類の観測が可能な「みらい」の周囲に、無人プラットフォームを複数配置し、従来よりも細かい水平スケールでのデータ取得を目指しています。その無人プラットフォームの一つが、この「トライトンブイ」です。
もともとは、熱帯太平洋・インド洋を網の目のように覆うブイ観測網の為に開発・運用されてきたブイです。今回は、そのうちの1基をお借りして、「みらい」の定点観測期間(1ヶ月)のみの観測に使わせていただいています。

写真の1枚めは、ブイを海面に下ろした直後の写真です。ここに写っているブイが、全体の最上部、海面に浮かぶ部分になります。そこには、各種の気象センサが付けられており、海面から出入りする熱や運動量などのエネルギーを計測しています。そのブイの下部にはワイヤーやロープが取り付けられており、先端の錘で海底のある点に固定されます。投入作業開始直前の写真が2枚めで、奥に見える丸い海面ブイ(投入後には海面下になる部分を下から見ている格好になります、ちょっとわかりづらいかもしれません)と、そこから伸びるワイヤー(黒)、ワイヤーに取り付けられた多くのセンサー(銀色や白)、が見えるかと思います。センサーでは、水温や塩分を測ります。今回は、浅い部分(海面〜深さ数十メートル)のセンサー数を通常の数倍である深さ5m間隔にして、大気とより密接に関係する海洋上部の鉛直構造をより詳細に捉えようとしています。

2枚めの写真でもわかるように、ブイの投入(や今後の回収)作業には、多くの人手がかかり、時間も半日以上必要です。一方で、トライトンブイ観測には既に20年以上の経験と技術が蓄積されており、安定した高品質データの取得が期待できます。既に投入から1週間経っていますが、特に問題なく観測を続けられているようです。もともと、1〜2年の間データを取り続けられるような機材なので、1ヶ月程度の観測は、「彼」にとっては余裕かもしれませんね。

1ヶ月後の回収まで、どんなデータが取れてくるか、楽しみです。

(M.K.)

8月15日

本日は8月15日。終戦記念日です。
船上には朝から日の丸の半旗が掲げられており、
正午には1分間の黙祷を行いました。

現在我々がいるパラオ北方沖にも
多くの船・飛行機・そして人が眠っているのかと思います。
そんな海域に長期に留まって科学研究ができることを先人に感謝しつつ
データを取り続ける1日です。

 

定点観測開始

一昨日からパラオ北方の海域での定点観測が始まりました。ラジオゾンデ、CTDなどの観測が3時間間隔で行われています。これから約1か月にわたる大気海洋の連続観測です。

研究者の方、観測技術員の方、船員の方たちが連携して観測にあたっています。写真は夜間のCTD観測作業を写したものです。途中から雨が降ってきました。実際に作業の様子を見ていると観測データに対する有難みを感じるようになります。

(SS)

使われています!

「みらい」からラジオゾンデ放球テストのブログがありました。その後、3時間ごとの連続観測も開始しています。概要ページにも記してある通り、今回は「みらい」観測に合わせて、フィリピンのレガスピ、パラオのバベルダオブ島、ミクロネシア連邦のヤップの3点でも、通常1日2回行われているラジオゾンデ観測を6時間ごと、1日4回、現地機関の協力を得て実施する計画です。このうち、パラオとヤップが8月6日からこの強化観測をスタートさせています。
「みらい」のデータと合わせて、積雲対流の発達過程を調べるために使うのですが、同時に速報データが、GTS(Global Telecommunication System;全球通信システム)と呼ばれるネットワークを介して世界中に配信され、特に、天気予報の初期値データとして使用されます。観測データを数値モデルに取り込み、数値モデルの値をより現実的な値にすることをデータ同化と呼び、この過程で初期値データが作られます。添付の図は、イギリスにある欧州中期予報センターのウェブサイト(http://www.ecmwf.int/en/forecasts/charts/monitoring/dcover)からダウンロードしたもので、強化観測を始めた2020年8月6日06時(世界時、日本時間の午後3時)とその6時間前の6日00時(日本時間午前9時)、さらには2日前(8月4日)の06時(日本時間午後3時)、それぞれの時間に、彼らのデータ同化に使用したラジオゾンデ観測点を示したものです。日本の南の海上に、3つの赤い点を確認することができるでしょうか? 日本の気象庁を始めとして、一般にラジオゾンデ観測は1日2回(世界時で00時と12時)行われ、06/18時の観測は多くありません。1枚目と2枚目を比べるとその差が容易にわかります。また、観測開始とともに、早速我々のデータが使用されたことも1枚目と3枚目の比較でわかります。
   この図はあくまで欧州中期予報センターの結果ですが、実は今日皆さんが見た・聞いた天気予報には、「みらい」や南の島々で取得されたデータが使われていたかもしれません。現在、新型コロナウイルス禍により、航空機(でも気温など測定しているのでそのデータが使われています)の運航が極端に減少し、観測データも減っています。そんな中、これからの台風シーズンに、我々のデータが少しでも補填して、予報精度維持に寄与することも今回の観測の意義です。(KY)